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思春期を迎えた里子について
和歌山県里親会会員 安武 隆信

和歌山県の高野山の麓、過疎の村、かつらぎ町のこどもの寺『童楽寺(どうかくじ)』の住職をしている安政隆信と申します。平成18年12月に和歌山県知事から養育里親の認定をいただき、里親歴2年足らずの32歳の若輩者です。

昨今、少子化、核家族化児童虐待の増加など、子ども達を取り巻く社会県境、教育環境は深刻化していると思います。
 そんな中、第一子の子どもを授かった2年前、少子化や過疎化による小学校の統廃合問題等を身近に感じるようになりました。子どもへの教育も、お寺やお坊さんとして大切な役割であると強く感じ、出産後間もない妻と有志を募り、こどもの寺を作ることを一念発起しました。
 当初は、両親の心配する声が強く、外野席からも反対や不安視する声もあり前途多難のスタートでしたが、子どもが人好きな者や多くの方の支援に恵まれ、励まされたのが大きな支えとなり、活動力となりました。さらに里親として認定・登録することができ、計画から1年半。多くの皆様の支援のもとザ・現代版寺子屋、その名も『童楽寺』を開くことができました。

先日までNHKの朝の連続ドラマで放映されていた「瞳」をご存知ですか?毎朝、子ども達が登校した後、妻と二人でテレビの前で「瞳」をかぶりつきながら楽しく見ていました。というのも私ども夫婦も、0歳と2歳の自分の二人の子どものほか、さまざまな事情で家庭、親元を離れた子ども達と一緒に生活しているからです。

寺子屋と言っても、特別なことをしているわけではありません。家族全員が、人に対して『ありがとう』の感謝の気持ちを言葉で伝え、また申し訳ないことをした時には『ごめんなさい』と素直に言える等の社会ルールを身に付けられるよう、ごく当たり前の生活をおくっています。そして、空気や水が澄み縁あふれる自然豊かな環境を生かして子どもが楽しめるようなイベントを企画、開催し、地域の子ども会の子ども達にも参加してもらい、町役場と連携した「子育てサークル」も開催しています。モットーとしては子ども達も人人の方々も、世代間を超えて楽しく集い交流し、色々な人間関係の構築を図ることです。

 子どもがこれまで生活していた家庭環境や経験から課題も多いのが実情です。基本的な生活習慣や机に向かって勉強するという姿勢が全く身に付いていない子どもや、勉強時間になるとソワソワしたり、泣き出したりする子どもがいます。そのような子ども遠の成長を支援するためには、家庭で、学校で、或いは連携してどのように接していけばいいのか、日々、勉強です。里親として、子どものこれまでの家庭環境や生活歴などを十分に認識したうえで、子どもと接していく重要性を再確認しました。

 私たち夫婦だけでなく、学校での特別支援教育、町社会福祉協議会様のご協力、勉強ボランティアの皆様の活躍で、基本的な生活習慣の習得と学力の向上に努めています。
 全く落ち着きのなかった子ども達も、日に日に落ち着き、食事中や朝のお祈りの際にはしっかりと正座することができるようになりました。また、これも徐々ではありますが、何も言わなくても、食事の配膳や洗濯物たたみなど、自主的にお手伝いをしてくれるようにもなりました。

 私ども夫婦は、若年ながら、みんなに支えられ、里子を含め、現在、家族9人一緒に生活しています。子どもが今までおかれていた厳しい環境や、長期間に渡る不登校などは、いい意味でリセットしてもらうことに成功しました。今では信じられないほどの笑顔で、たくさんの友達にも恵まれ、クラブ活動も熱心に取り組むまでに成長しました。これも近所の友達、学校の先生方やボランティアさんのあたたかいご支援とご協力の賜物であると、日々、感謝しています。

 「里親とは何なのか?どんな活動をしているのか?どんな子ども達が、どんなことで悩んでいるのか?」を引き続き伝えるとともに、里子との感動の場面を伝えることで、一人でも多くの方が里親に対する感心、興味を持っていただけることを願っています。
 私たち夫婦の考え方に賛同いただいた方々に、日々、感謝し、子ども達の未来のために、今後も里親活動を通じて子どもの生活を少しでも安定させることができればと考えています。
 (2008年11月16日
    里親セミナーで体験発表していただいた内容)