直線上に配置
直線上に配置

「乳幼児期の里子について」
和歌山県里親会 N・U

 現在、我が家は主人、小学3年生の男の子・3歳の女の子・犬2匹で暮らしています。里親になった動機は、主人が養育家庭で育った里子のテレピ番組を見ていて、自分たちも子育てをしてみたいと言い、すぐに児童相談所に登録をしました。

 それから半年ほど経ち、今の小学3年生のAが、我が家の一員となりました。Aとの初めての面会の日、主人と二人、ワクワク、ドキドキしながら乳児院の面会室で待っていると、ヨチヨチと歩いてきた姿が、今でも目に焼きついています。

 1歳9ヵ月でした。次の日から毎日、面会、外出・外泊を1ヵ月続けましたが、Aはいつも無表情で、言葉の発達にも遅れがありました。初めての外泊、その夜に高熱を出し、休日救急センターに走り、不安な一夜を過ごし、体力と根気のいる毎日が始まりました。
 当初は、夜なかなか寝てくれず、抱っこして寝たかなと思って、布団に寝かせると、また目が覚める。時には主人が車に乗せて走ったり、おんぶをして近所のまわりを歩いたりしました。また、お風呂に入るのを恐がり、7月の暑い時期でしたので、タライがお風呂代わりとなり、3ヵ月続き、やっと湯舟に入る事が出来ました。


 毎晩絵本の読み聞かせをしていましたが、そのうち「もっと読んで」と言うようになり、小学3年になった今も読み聞かせを続けていますが、本人もすっかり本好きになり、週に一度は図書館に行き、本を借りてきて読んでいます。

 無表情だった子が、近所の子ども達に遊んでもらったり、お母さん方に声をかけて頂き、家におじゃまさせて頂いたり、私達の両親に毎日愛情をかけてもらった事などで、あっという間に表情豊かな子どもに育っていきました。周りの方々には、感謝の気持ちでいっぱいです。保育所の3年間、参観日、運動会、生活発表会と、諸々の行事を見るたび、子どもの成長をうれしく思います。

 里親同志の悩みのひとつ、真実告知は大きな壁と思っていました。私達夫婦は、なるべく機会があれば早いうちに、と考えていました。保育所年長のある秋の事でした。この日に話そうと決め、Aと二人向き合って話しました。この子はどんな思いをするのだろうと、可哀相に思い、内心ドキドキしていました。私は「あなたはママのお腹の中から生まれてきたのじゃないのよ。あなたを生んでくれたママは他にいるけど、あなたの事が一番かわいかったからうちに来たの」と言って抱きしめました。Aは「ふうん」と言う返事だけで別に気にしている様子もなく、本当にわかってくれたのか少し心配でしたが、私もこれ以上何も話す事もなく、何カ月か過ぎた頃、「僕は、ママのお腹の中から生まれてきたんとちがうんやな」と確認するかのように聞いてきました。
 Aを力いっぱい抱きしめ「ママは、あなたの事が世界で一番大好きだから」と言うと「僕もママ大好き」と言ってニコニコして外に遊びに行きました。私が思っていたより、真実告知はスムーズに終えたと思います。

 私の母の末の妹は、生まれて間もなく家の事情で里子に出されましたが、姉妹仲良く、時々会って楽しい時間を過ごしているようで、今では3人の孫にも恵まれ、大変幸せに暮らしています。私達の子どもはまだまだ、これから先、中学、高校と多感な時期を迎えますが精一杯の愛情をそそぎ、子どもと共にのりこえ、自立に向けて努力し、また里親同志の交流を深め、互いに助け合い、励まし合い、ともに幸せな未来がきますよう、頑張って参りたいと思います。