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      「里親制度をめぐる最近の動き」
 奈良県中央こども家庭相談センター  岸岡 靖郎

【児童相談の現状】
 こども家庭相談センターには、子どもの発達や成長、夫婦開・家族内のトラブルなどに関する様々な相談が寄せられます。その中でも、最近、特に深刻なのが児童虐待です。

 原因は、親の生育歴、夫婦間が不安定であるなどの家庭の状況、親自身の社会からの孤立感、そしてさらに、子ども自身の育てにくさなど、子ども側の問題もありますが、特に親とその子どもとの関係(親子の愛着関係が不十分など)が大きな要因であると指摘されています。

【社会的養護】
 親から深刻な虐待を受け、安全が確保されない場合は、一旦、家族を離れ、児童養護施設や乳児院などの「児童福祉施設」や
「里親」のもとで生活することになります。

 児童福祉施設には、長年の歴史と経験、職員間の連携があり、また集団生活を通して安定した処遇が期待できるなど多くのメリットがあります。
 一方、里親は、施設のように複数の専門的な者が援助にあたることは難しいものの、家庭に近い環境のもとで個別的な処遇により、親密な人間関係を築くことができるという特徴があります。

【被虐待児への対応】
 虐待で傷ついた子どもの心のケアをするには、子どもにとって安心できる望ましい環境を整えなければなりません。
 子どもが健やかに育つ上で、幼児期に「大切にされている」
「自分が愛されている」という経験をすることは非常に大切なことです。特に、虐待された子どもは、親の愛情を受けて育つ経験が乏しかったわけですから、子どもがたくさんの愛情を感じ、受けとめることができる生活環境が望ましいと考えています。

 平成14年には児童福祉法上に「里親」が明文化され、社会的な養護を必要とする子どもを、より家庭に近い環境で、きめ細やかな対応が可能となる「里親」へ大きな期待が寄せられることになりました。また、専門的な知識と技術を持った里親が、被虐待児や非行児を対象に親密な援助を行う【専門限親】の制度が創設されました。

【社会的養護体制に関する構想検討会中問とりまとめ】
 さらに、本年5月に公表された厚生労働省の「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」では、虐待を受けた児童や障害児らへの支援強化策として、家庭的な環境の中で子どもを預かることができる里親や小規模な施設の拡充を求める中間報告がまとめられました。
 この中で、里親については、
@国民運動として里親制度の普及
A養育里親と養子縁組を前提とした里親の区分
B里親手当、里親研修の充実
Cマッチング(里親と里子との委託調整)のための児童相談所の体制確保
D専門里親の拡充等の目ハ体的な施策が提案されています。

 以上のように、社会的な支援を必要とする子どもたちをとりまく環境が大きく変化している中、里親制度が見直され、その役割に一層の期待が寄せられています。

 今後、センターとしても、国の勤きにも注目しながら、子どもたちの幸せのために努力してまいりますので、里親制度に一層のご理解とご協力をお願いします。

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